【zorozoroさん】に特定調停体験談インタビュー
2009/05/01
2002年12月末に特定調停の支払いを開始し、2005年9月には全ての借金を完済させたzorozoroさん。サイト「ドキュメント特定調停」を運営されており、詳細な特定調停の流れを掲載されています。また、特定調停申立時に使われる用紙の記入例も掲載されており、具体的にどのように記入すれば良いのかがわかるようになっています。それでは早速インタビューを開始します。
- ドキュメント特定調停(閉鎖)
- http://www.geocities.jp/kusunoki_zoro/
――皆さん多額の借金を背負ってしまった経緯は様々だと思いますが、zorozoroさんの場合、キッカケはどのようなものでしたか?
zorozoro: 私は、いわゆるワーキングプアでしたから生活費が乏しかったのです。とりあえず最初は軽い気持ちでキャッシングを申し込みました。まぁ10万位のキャッシングは「普通」だって思ってまして・・・。ただ、10万はあくまで限度額であって、実際に借りた金額は1万円だけです。無人契約機でしたので、審査は運転免許証の提示だけ。職場には在籍確認すらしませんでした。その簡単さがちょっと怖くて、とりあえず必要な分の1万円しか借りなかったのです。
あの時のことはよく覚えてます。現在は社会問題となっている「派遣切り」で仕事がなくなりました。しかし、キャッシングカードは手元に残ったままです。これがいけない。当初は生活費のほんの補充に過ぎませんでしたけど、「働いてればすぐに返せる」と思い、徐々にエスカレート。・・・どんどん慣れていってしまい、気付けば「多重債務者」になってました。返す額より借りる額の方が多いので、当たり前の結果なんですけどね。
――多重債務に陥って毎日の生活が厳しくなってきた頃、特に印象に残っている事といえば何でしょう?
zorozoro: 特に、というのはないですが、とにかく月末になると金融業者4件の店舗ATMへの返済行脚にうんざりしました。しかもお金が無いので、元本返済で発生した利用可能枠からまた借りて・・・。最後の1年位は利息しか払ってない状態でした。「一生終わらないかも・・・」と思っても、どうしようもなかったです。多重債務者という事実を認めず、いつか何とかなると思い直して現実逃避してました。
――弁護士事務所や無料相談所に行かれたそうですが、その時の対応などはどうでしたか?
zorozoro: 弁護士事務所は、相談と言っても流れ作業的でした。長テーブルで他の相談者と一緒に並び、事務員へ相談するという形態でプライバシーも何もなかったです。数をこなして利益を得ているのか・・・?でも薄利多売にしては報酬が相場より高かったです。まぁ建物の構えは立派でしたので、きっと儲けているんでしょう。私は新聞の折込広告を見て電話して訪問したのですが、首都圏の電車の窓などにも広告が貼ってある大手の事務所です。見かけた時は笑いました。皆さんご存知かも知れませんね。無料相談所の方は電話対応のみでしたが、こちらはもっとひどかった。「5分しか話せません。後は事務所までどうぞ、相談は・・・」っという、ただの事務所への勧誘電話という感じです。どちらも対応としては最悪でした。迅速さが売りのようでしたので、取り立てに困ってる人には利用価値はあるのかも知れません。ただ弁護士介入は、私には特にメリットがないため、依頼しませんでした。
――特定調停を自らの力で見事成功させたわけですが、不安などは無かったのでしょうか?
zorozoro: インターネットで調べただけの知識で臨んだのですが・・・逆に言えばその程度でも十分なんですね。私の相手はすべてCMでお馴染みの大手の業者でしたし、裁判所も地元でしたから特に大きな不安は無かったです。「駄目で元々」などと開き直っていたから、ということもあるでしょう。借金問題は開き直りもとても大事です。一回目では調停委員も「大手の業者だから応じるでしょう。大丈夫ですよ」と雰囲気を和ませてくれたりしました。二回目で結局業者は出席せずに、こちらの条件に応じる形での17条決定となりました。不安よりも「これが済めば楽になるんだ」という、借金問題が解消される期待の方が大きかったです。
――裁判所の事務員の方の対応はどうでしたか?
zorozoro: 地元の裁判所は大きな街にあるわりにとても空いていて、受付の書記官も手馴れてました。サッと手続きの仕方を教えてもらい(すべて知ってましたけど)、申し立ての用紙を貰ってすぐ帰りました。こっちとしては若干恥ずかしい気持ちはありましたけど、事務員は多くの相談を受けてるせいか、特に驚くようなこともなく、終始対応はとてもよかったです。地元という気楽さもありました(多くの人は地元での申し立てではないでしょうから)。
翌日、書類を用意して行ったのですが「業者数分のコピーが必要です」と指摘され(前日に説明されてたのに)、ああそうだっけと慌てて近くのコンビニまでコピーしに行きました。むしろ、そっちの方が恥ずかしかったです。特定調停の申し立てに行くのに勇気は必要ありません。純粋に実行力だけです。
――特定調停の用紙の書き方は、やっぱり難しかったですか
zorozoro: 簡単なんですけど、ほとんどの多重債務者は借金の返済履歴が載っている「明細」を保存していないと思います。その為、具体的な債務額がいくらか迷うことはあるでしょう。また、例えば総債務額が300万円あっても、最初から300万円借りたというわけではないわけで、その辺りのことは一体どのようにすれば良いのだろう・・・?と悩んだりすると思います。私もそうでした。まあ単純に一番最初に借りた日付と金額を書くだけで良いんですけどね。でもそれを知らなければ書けないわけで。そういう意味では難しいかもしれません。私のサイトにはそういう人達の為にと、書類と記入例を掲載してます。(現在サイトは閉鎖しています)
――特定調停を行った際、今までの生活と変わった点はありましたか?
zorozoro: 支払いは終わっていませんでしたが、多重債務者という恥かしさ、苦しさから開放された気持ちでいっぱいでした。払えば払った分だけ残債務が減っていくのが嬉しかったです。私の支払額は総債務額が少ないせいもあって、他の人と比べたら微々たるものでした。返済後に多少のお小遣いも残るくらいです。もちろん返済計画を予め低く設定したおかげでもあります。余暇も普通の人同様に楽しむことができました。毎月の支払いも楽しみ(笑)で最終的に3件も繰り上げ返済をしました。返済途中で生活状況に変化があって苦しい時もあったんですが、何とか乗り越えることができました。特定調停すると人生変わりますよ。
――特定調停をしてからは借金の取り立ても無くなったんでしょうか?
zorozoro: 私は利息だけでもきちんと払ってたので取り立ては一度もなかったです。一度だけ期日に払うことができない時があって、その時は先にこちらから業者に電話して相談しました。とにかく消費者金融は一日でも遅れると電話来ますから、どうしても支払いが難しくなってしまった場合には、率先して自分から電話すべきです。受付の人の話では一週間程度の遅延であれば全く問題ないとのことでした(もちろんその場合は遅延利息はかかります)。もし一週間以上の遅延が発生してしまうと、契約の解除、またはカードの利用停止処置等がとられるようです。むしろ多重債務者にとっては、それもいいかもしれませんが。特定調停申し立てを行うと債権者は取り立てができなくなりますので、取り立てで困ってる人はとりあえず申し立てるのも手です。
――特定調停を行ってみて、良かったと思いますか?後悔はありませんか?
zorozoro: 特定調停を行ってみて、状況が良くなる事はあっても、悪くなったということはありませんでした。私自身が受けた相談で一番多いものが「ブラックとなるのは困る」というものですが、そもそも多重債務の状態では信用状態はブラックとあまり変わりません。それに信用情報機関への記録は一生残るわけではありません。もちろん、記録が残っている期間にローン審査の障害となることは考えられますが、どちらにせよ多重債務の状態では審査は通らないでしょう。
悩んでばかりいても、生活や気持ちは安定しないままで何も解決しません。特定調停は自己破産とは違い、単なる現実的な返済方法を決めるだけに過ぎません。社会的に差別されるようなこともありません。なぜもっと早くやらなかったんだろう、ときっと思うでしょう。後悔など微塵もありません。ちなみに私はスポーツクラブに入会する際に、提携クレジットカードを強制的に申し込みさせられたのですが、なぜか審査に通ってしまいました。所詮、その程度のものなのです。
――特定調停を行っていなかったなら、借金を完済することはできていたと思いますか?
zorozoro: おそらく無理でしょう。大企業で公務員並の賞与があって、さらにそれらをすべて返済に回せるのであれば可能でしょうけど。それにしても特定調停を申し立てた時点で債務額と同程度の利息を支払っていたんですから、消費者金融の利息の高さには驚きます。しかもそれだけ利息を払っても債務は減ってませんでしたから。普通に考えて完済できるわけありませんね。債権者は、法定利息だけでも利益を得た、後は元本返済だけであればこちらも十分払えるのですから、破産されるよりは相手にとっても悪い話ではないと思います。決して人の道に外れた行為ではありません。払えないからって自暴自棄になったり犯罪に走ることこそ、人の道に外れた行為です。法的な救済として特定調停があるのですから遠慮なく利用すべきです。
――全ての借金を支払い終えてから、一番印象に残っている贅沢といえば?
zorozoro: 旅行ですね。私は一人旅が大好きですから。といっても、これに関しては借金の支払いが終わる前から行ってましたけど・・・。完済後の晴れ晴れした気分での旅行は格別に楽しいですよ。それと、完済した年から毎年、自分の誕生日に外食することにしました。まあ普段より高いお金出して食事するという、ほんのちょっとした贅沢です。今年は王道のフランス料理を予定してます。ただ残念ながら今の所「ひとり」でですけど・・・(笑)
――皆さん、zorozoroさんがひとりで寂しがっておられます(笑)
zorozoro: べ、別にさびしくないですよ・・・(汗)
――お仕事がお休みの時は、何をされていることが多いですか?または、最近ハマっていることは?
zorozoro: 昔からなんですが、パソコン(インターネット)です。最近は、初音ミクなどのボーカロイドソフトで製作した作品を動画サイトに投稿して遊んでます。
――初音ミクですか。ニコニコ動画ですごく流行ってますよね。
夜の時間帯はインターネットがメインですが、昼間はブラブラとプチ旅行や日帰り温泉など、なるべく外に出かけるようにしてます。地元に今流行の「ねこカフェ」が出来たんで、癒されに行ってます。猫好きなもので結構通ってるんです。
――ねこカフェですか〜。癒されそうですね。
それと最近フォークギターを買いまして。全くの初心者ではありますが、下手なりに練習してます。いつか弾き語りができるようになるといいですね。ただ、過去にトランペット、ピアノと挫折歴ありですが・・・まあいいでしょう(笑)
――もうすっかり借金とは無縁ですね。
完済から3年以上経過しましたが、特定調停のサイトは借金で困っている方々の為に参考になれば、と公開し続けてます。最近、本物の弁護士さんからリンクの依頼があったんですよ。早速相互リンクしました。
――これからの目標や夢(やってみたいこと)を教えて下さい。
zorozoro: 現在の夢は「行政書士」資格の取得。特定調停で民法をかじったもので、これを機会に本格的に民法を勉強しようかなと思いまして・・・。トラブル等で最も多いのが民事問題ですし、民法の専門家として困ってる人を助けたい気持ちもあるので。もちろん独学なんですけど。それでも民法に多少は詳しくなり、知人にも相談されることも多いです。さらには借金とは無関係な民事問題もあり、深入りしてしまって訴訟にまで発展し、相談役の私までが精神的ストレス感じるようになってたり。・・・なんとか知人共々頑張ります。
――最後に読者の皆さんに一言メッセージをお願いします。
zorozoro: 借金で悩んでいる人の中には「借金は自分の責任だから」と、誰にも相談せずに我慢し続ける人が多いのですが、何よりまずは行動を起こして下さい。借金問題はそのまま放っておいても勝手に解決はしません。あなたと同じような人は大勢います。専門家に相談するのもよし、すぐにでも裁判所へ行くのもよし。裁判所への申し立ての相談は手ぶらでもいいんですよ。私のサイトでの書類をプリントアウトして書き込むだけでも実行の第一歩なんです。とにかくあなた自らが行動することで解決するものなのですから。
――zorozoroさん、ありがとうございました!